MATEC UPCYCLE PROJECT -episode1-
リサイクルレザー名刺入れ
interview / 株式会社レザースタジオKazu
photo / 菅原一剛
職人技で使用済み本革シートに命を吹き込む
手作業で製造される自動車シート
自動車シートの製造は「裁断」「裁縫」「発泡」「組み立て」の4行程からなります。裁断は、コンピュータ制御の自動裁断機により部品を切り出します。裁縫は、職人が工業用ミシンを使用して行います。発泡は通常、シート内部にウレタン原料を注入して発泡させる「一体発泡工程」と呼ばれる方法が用いられます。組み立ては、クッション、カバー、フレームなどの部品を取り付け、アイロンでシワを伸ばし、ドライヤーでツヤをだして仕上げます。裁断以外はいまも、人間の手によって作られています。
シート素材は布と革の2種類。高級車には本革が使用されます。本革は主に牛の皮を鞣(なめ)して使用します。鞣す理由は動物の皮をそのまま使用すると腐敗、硬化します。そのため鞣剤(じゅくざい)を使用し、腐敗の原因となるタンパク質や脂肪を取り除き、柔軟性や耐久性を持たせ、安定した素材「革」に変化させます。
ちなみに「なめし職人」をタンナーと呼ぶのは、植物の成分であるタンニンを利用した鞣しが古くから行われてきたことに由来します。現在はこの方法に加え、化学薬品を使用する「クロムなめし」などがあります。
本革シートのメリットは滑らか、柔らかいなど使用感がよく、高級感に溢れていること。デメリットは高価であること。
シート1脚当たり数十万円以上となっています。自動車の性能を左右する大切なパーツであり、革そのもの質が優れているにもかかわらず、自動車シートのリサイクルはほとんど進んでいず、最後はボイラー燃料として処理されているのが現状です。
マテックはこうした現状を少しでも打破するため、高級車などのシートに使用されている本革に着目したアップサイクルレザーの商品開発を、株式会社レザースタジオKAZU(本社・滝川)と協働で取り組み、自動車シートのリサイクル率の向上に努めています。
逸品を生み出し続けるKAZU
レザースタジオKAZU は「メイド・イン・北海道」をモットーに2004 年設立の皮革製品の製造会社です。道路に面した壁をガラス張りにした工房は、職人さんたちの作業風景が外から一望できます。製作工程や品質管理に対する揺るぎない自信の現れで、クォリティーの高い逸品を生み出し続けています。
名刺入れには最適な本革
皮革製品の逸品を製作するレザースタジオKAZUが、マテックのアップサイクル商品として製作しているのが「名刺入れ」。
使用済み自動車のレザーシートから回収した原皮と、職人技が融合して生まれる製品の製作工程は以下のとおりです。
まず、長年使用されたレザーシートには汚れやゴミなどが付着していることが少なくありません。このため徹底的なクリーニングの実施が製作の第一歩になります。この工程は次の加工段階での品質を確保するとともに、最終的な製品の美しさとして反映されるため、手を抜くことは許されません。
ちなみに、レザーシートは長年の使用に耐えられるように、車内に差し込む日差しや寒暖差など耐候性に優れているのを始め、色褪せしにくく、摩擦に強く、傷つきにくいなどの特性を持ち、品質にはまったく問題がありません。むしろ、名刺入れのように日常的に使用するアイテムにとっては最適な素材となります。次の作業は裁断と縫製になります。
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使用済み自動車のレザーシートを丁寧に回収
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回収したレザーシート
サステナブルなモノづくりへ
裁断は、使用済み自動車から回収したレザーシートの面積や形が不揃いのため、傷や汚れを避けながら最適な部分を選定し、製品の形状に合わせてカットします。この作業は非常に手間がかかります。加えて、製品になった時に全体がすっきり見えるように、革の厚みを0.1~0.2ミリ単位で調整します。
縫製は、職人の技術と経験が求められる最も重要な工程になります。工業用ミシンを使用して一目一目、ステッチ幅が均一になるように縫い上げ、製品の強度と美しさを両立させます。また、革の断面部分である“コバ”の処理も革製品の仕上げを左右する重要なポイントになります。コバを丁寧に磨き、滑らかにすることで、名刺入れ全体の印象が大きくアップし、使い心地も向上します。極めて高い品質の名刺入れの完成です。
本革を使用しているため“経年変化”を楽しむことができるのも、アップサイクルレザー名刺の大きな魅力になります。使い込むほど味わいが深まり、世界でただ一つの持ち主だけのアイテムに成長します。
アップサイクルのレザー製品は、環境に負荷をかけず、生産コストを抑えて、高品質な製品を生み出すサステナブルな方法として、世界の企業が積極的に取り組んでいます。製品も衣料、シューズなど多方面に広がっており、機能やデザインが急速に進化しています。ビジネスの新たな可能性を広げるキーワードの一つとして注目で、その中にKAZUのアップルサイクル商品が存在しています。
