MATEC UPCYCLE PROJECT -episode3-
リサイクル南部鉄瓶
interview / 薫山工房 佐々木和夫
photo / 菅原一剛
南部鉄瓶がマテックで回収した北海道の鉄と出会う
軽くて丈夫でサビにくい
鉄は恒星内部の核融合で生成されます。地球の地殻に鉄が豊富に含まれているのは、太陽系が超新星爆発の影響の下に形成されたことを示している、と言われます。鉄から滲む独特の存在感は、宇宙の記憶を内包しているからでしょうか。
その鉄を素材に作る鉄瓶、特に岩手県盛岡市や奥州市水沢地域で生産される南部鉄瓶が人気です。江戸初期、南部藩主が京都から釜師を招いて湯釜を作らせ、その湯釜を小ぶりにしたものが南部鉄瓶とされています。1975 年に国の伝統工芸品に指定されました。
マテックは廃棄物から回収した鉄を原料にする南部鉄瓶をマテックプロダクツ及びECサイトより販売しています。この南部鉄瓶は盛岡市の薫山工房とのコラボによって製作されています。現在、紋様や大きさが異なる20 種類近い鉄瓶があり、今後も新作の発表、販売が予定されています。薫山工房による「軽くて丈夫でサビにくい」南部鉄瓶が、皆様の手に届くまでのストーリーをお楽しみください。
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リサイクル南部鉄瓶平丸型(ハート霰/1.6L)
自動車整備士が南部鉄器職人になる
南部盛岡藩の鋳物師として召し抱えられた鈴木越前守縫殿藤原家綱の流れを持つ老舗・鈴木主善堂より浅田薫が独立し、盛岡城の城下町として栄えた歴史を持つ大沢川原小路に工房を構えたのが、薫山工房の始まりです(1937 年頃)。初代・薫山は3男4女に恵まれ、長男・弘が2代目として継ぐことになりましたが、病により鉄瓶作りを断念せざるを得なくなり、三女と結婚して自動車整備士として働いた佐々木和夫さんが1976 年、3代目・薫山として工房を継承しました。
和夫さんが経緯を語ります。
「国家資格を取得して自動車整備工場の経営をやることになっておりましたので、工房継承の話は青天の霹靂でした。車屋でしたから鉄の扱いには慣れていたものの、熔けた鉄を見るのは初めてで、このような私が責任を果たせるのか大変に不安でしたが、自分の意のままに鉄に形を与える仕事は非常に興味深く、引き継ぐことを承知しました。2年間ほど初代・薫山から仕事を教わり、その後は南部鉄器協同組合が国の高度化資金の融資を受けて盛岡市北山に設置した共同作業所に詰める職人集団から、学校で教わる以上に極めて懇切丁寧に鉄瓶作りを学ぶことができました」
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三代目薫山 佐々木和夫さん
原料に電動モーターのカバーを要望
薫山工房は1989 年、御所湖畔に残る重要文化財「南部曲り家」に隣接して開設された「盛岡手づくり村」に拠点を移し、南部鉄瓶を製作しています。マテックとの出会いは非常に興味深いものがあります。
「2020 年のことになりますが、マテックさんから使い捨てカイロに含まれる鉄粉を鉄瓶の材料として再利用できないかという提案を受けました。カイロの鉄粉までリサイクルするのかと大変に驚き、そして感心しました。提案内容については、南部鉄瓶は砂鉄を原料に始まった歴史を持ち、鉄粉で代用できると思っていたようですが、残念ながら利用できないと断りますと、使用済み自動車などの廃棄物から回収した鉄ならどうかと重ねて提案され、それなら可能性があると返答しました。新しい鉄は軟らかくサビやすいので鋳物屋なら皆、昔から故鉄(ふるずく)と呼ぶ古い鉄材を混ぜて作っております。マテックさんのリサイクル鉄を使用する提案そのものには、何の抵抗もありませんでした」
和夫さんは、放熱用フィン(羽)がついた電動モーターのカバーから回収した故鉄を筆頭に、きめが細かく硬い鉄材を要望しました。
「そのような故鉄を新鉄に配合すると、砂鉄を原料にした鉄と遜色のない硬さまで上げることができ、よりサビにくい鉄瓶の製作が可能になります。後日、要望した故鉄のサンプルが北海道から貨車で届きました。目的の硬さが得られる配合率を慎重に定めて試作すると、非常に良い結果が得られました。その時、盛岡の車屋だった者が南部鉄瓶の鋳物屋に転身し、数十年の時を経て使用済み自動車などをリサイクルする北海道の企業と出会い、理想に近い原料を手にできたことに対して、ある種の運命を感じました」
マテックの故鉄を配合した原料による南部鉄瓶の製作がスタートしました。マテックのキャッチフレーズ「I♡RECYCLE」を必ず鉄瓶の蓋(ふた)の裏に刻み、南部鉄瓶の象徴的な紋様” 霰(あられ)“をハートマークにしたものなど多彩なデザインの南部鉄瓶を考案しながら、5人の職人さんとともに製作に励んでいます。
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蓋の裏に刻まれた「I♡RECYCLE」の文字
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ハートをあしらったユニークなデザイン
限界の2ミリにこだわる
鉄瓶の厚みは、「鋳型」と「中子」の間の隙間で決まります。鋳型は鉄瓶の外形を形作る型で、中子は内部の空洞を作るための型です。中子は鋳型の内側に配置されます。
「一般的な鉄瓶の厚みは3~4ミリですが、厚いと重く、扱いづらくなります。当工房では『軽く、丈夫で、サビにくい』をモットーに、限界の2 ミリにこだわっています。この厚みは、初代・薫山から受け継いだ伝統です」と和夫さんは語ります。
南部鉄瓶の鋳型は「胴型」と「尻型」に分かれ、胴型はさらに左右に分割できる「割型」と呼ばれる構造です。今では多くの工房で使われる「割型」ですが、実はこれを最初に考案したのが初代・薫山(浅田薫)でした。
鋳造では、溶けた鉄(溶湯)を鋳型に流し込み、凝固して十分に冷えた後、尻型を開きます。次に、胴型のタガを外し、事前に筋目をつけた部分に沿って型を二つに割ります。こうして鉄瓶を取り出します。うまく割れれば、軽い手直しで鋳型を再利用できるのが「割型」の強みです。昔は毎回鋳型を壊していたため、型を一から作り直す必要がありました。「割型」の登場で、南部鉄瓶の生産効率は大きく向上しました。
鉄瓶を取り出した後は、内部に残った中子を砕いて取り除き、外側の砂を丁寧に落とします。鋳バリ(余分な部分)は砥石やタガネで削り、金ブラシで表面を磨き上げます。最後に、鉄瓶本体で約800℃前後の炭火で30分~1 時間程焼き、表面に酸化被膜を形成。これにより、サビを防ぎます。
「製作工程はどの鋳物屋も同じですが、異なるのは鉄の配合率、熔解温度、鉄の厚みなどです。例えば鉄を厚くすると鋳型の傷みが早くなる、薄くすると熔鉄がまわりづらくなるなど、調整が難しくなりますが、その限界に挑戦する職人技が各工房の個性や特徴として現れます」
南部鉄瓶の独特な着色方法で仕上げる
鉄瓶の仕上げは「本漆の手塗り」と「おはぐろ塗り」になります。本漆とは漆の木の樹液を100%使用したもので、鉄瓶本体との密着性に優れ、乾燥するとガラスのように硬くなり、傷跡などが付きにくくなります。鉄瓶を約250度に熱して本漆を塗り込み、さらにその上から茶汁と鉄錆を混合した液状のおはぐろを塗ります。
「おはぐろを塗る理由は、漆の光沢を落ち着かせることにあります。これにより奥ゆかしい上品さを漂わせる鉄瓶に仕上がります。この着色方法は昔から受け継がれてきた南部鉄瓶の独特のもので、欠くことのできない製作上の表現になっています。今後も南部鉄瓶の伝統を守り、よりハイレベルな鉄瓶づくりに精進したいと思います」と和夫さんは語りました。
LINE UP
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リサイクル南部鉄瓶 布団型 2.2L ハート霰模様
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リサイクル南部鉄瓶 南部姥口型 1.0L 桜模様
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